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有給が毎年 6 日、使われないまま消えている — 取り方ではなく「使い道」から決める

陽の当たる芝生の公園に、誰も座っていないベンチがひとつ置かれている。使えるのに使われていない時間を象徴するイメージ
Photo by Sheng Hu on Unsplash

有給休暇の取得率は、10 年連続で上がり続けて過去最高になりました。それでも、1 人あたり年 6 日 が使われないまま残っています。

厚生労働省の令和 7 年就労条件総合調査によると、労働者 1 人平均の付与日数は 18.1 日、取得日数は 12.1 日、取得率は 66.9% です(令和 7 年就労条件総合調査。常用労働者 30 人以上の民営企業 3,820 社の有効回答)。付与と取得の差が、そのまま 6.0 日です。

20 年勤めれば 120 日。平日だけで 約 4 か月ぶん が、誰にも使われずに消えている計算になります。

この記事は、その 6 日の使い道の決め方だけを扱います。

「取れない」の中身は、もう変わっている

有給が使えない理由として挙げられるのは、たいてい次の 3 つです。忙しい。同僚に悪い。言い出しにくい。

この 3 つが有効だったのは、取得が完全に本人任せだった頃までです。2019 年 4 月から、年 10 日以上の有給が付与される人については、会社側に年 5 日を取らせる義務があります(労働基準法 39 条 7 項)。本人が申し出なければ、会社が時季を指定して休ませなければならない。取らせなかった会社には罰則があります。

つまり、最初の 5 日は「取れない」という問題ではなくなりました。取得率が 10 年連続で上がっているのは、主にこの効果です。

残る問題は、義務のぶんを超えた 6 日 のほうです。ここには誰も指定を入れてくれません。そして、この 6 日が消える理由は、忙しさとは別のところにあります。

消える理由は、使い道が空欄だから

会社に伝える理由は「私用のため」で足ります。法律上、取得理由を告げる義務はありません。

けれど、自分の中の理由が空欄だと、申請そのものが起きません

これは怠慢ではなく、順序の問題です。休みを取る作業は、実際には次の 3 手に分かれています。

  1. その日に何をするかを決める
  2. 日付を決める
  3. 申請する

多くの人が詰まるのは 3 ではなく 1 です。1 が空欄のまま 2 と 3 だけをやろうとすると、「特に予定もないのに休むのは、来月でいいか」という判断が毎回勝ちます。そして来月も同じ判断をします。

年末に残日数を見て慌てるのは、この先送りが 12 回積み上がった結果です。残っているのは休みではなく、決めていない意思決定のほうです。

同じ構造は、やりたいことリストが実行されないときにも起きます(バケットリストが続かない 5 つの理由)。金額でも意欲でもなく、日付が入っていないものは動きません。

6 日を、必要日数で仕分ける

使い道を決めるとき、いきなり「何をしよう」と考えると手が止まります。先に 枠の形 を決めてから、そこに入るものを探すほうが速い。

年 6 日は、次の 3 つの形に分けられます。

使う日数何を当てるか
平日枠1 日 × 3〜4 回平日でないとできないこと平日しか開いていない窓口、混雑期を外した美術館、親の通院に付き添う、健康診断の再検査
週末拡張枠金 or 月 × 1〜2 回移動に片道半日かかる国内遠方の実家、離島、山の中の宿、1 泊では削られる距離
積み残し枠1〜2 日期日が動かせない用事子供の行事、法事、車検、更新手続き

配分の目安は 平日枠 3・週末拡張枠 2・積み残し枠 1 です。積み残し枠を最初に大きく取ると、結局そこに全部吸われます。実際には積み残しは 1〜2 日で足りることが多く、多めに確保しておくと「予備日」の名目で溶けます。

ここで重要なのは、平日枠の使い道を「休息」にしないことです。休息を目的にすると、疲れていない週には取る理由が消えます。1 日枠は「疲れたから休む日」ではなく、平日でないとできない用事を当てる日 として設計してください。この枠には土日で代替できるものを入れません。

なお、5 日以上の連続した休みが必要な項目は、この 6 日では組めません。そちらは枠の作り方から違うので、まとまった休みが取れない、の前に に分けて書きました。

年代帯から、日付を先に入れる

枠が決まったら、そこに入れる項目を年代帯のリストから拾います。順番はこうです。

手順 1: 締切が自分の外にある項目を先に拾う

親の年齢、子供の年齢、店や施設の営業、制度の期限。自分の意思では動かせない締切を持つ項目から先に日付を取ります。親と行きたい場所があるなら、親の年齢から残り回数を出す(あと何年、親と一緒にいられるか)。この種の項目は、来年に回すと回数そのものが減ります。

手順 2: 実際の日付を書く

「今年中」「秋ごろ」ではなく、11 月 14 日(金) と書きます。曜日まで書くと、週末拡張枠として使えるかどうかがその場で分かります。

手順 3: 半年ぶんだけ入れる

12 か月ぶんを埋めようとすると、後半が必ず崩れて全体が無効になります。半年ぶん、3 日ぶんだけ入れて運用する。残りは半年後に、同じ手順でもう一度やります。

年代帯という単位で項目を持っておく理由は タイムバケットの作り方 に書いた通りです。「30 代でやる」と決めてある項目は、10 年のうちどの年に置いてもいいので、有給の枠に合わせて動かせます。「いつか」のままの項目は動かせません。

体力が要る体験ほど早い年代に置くべき理由は 旅は何歳で行くかで価値が変わる に、項目が多すぎて選べないときの絞り方は やりたいことが多すぎて時間が足りない にあります。

消える前に使い切るための、細かい手

順序を直したうえで、まだ余る場合の手です。

時効は 2 年。繰り越せるのは 1 年ぶんだけ。

年次有給休暇の請求権は 2 年で時効消滅します(労働基準法 115 条)。2020 年の改正で賃金請求権は当分の間 3 年になりましたが、年休は 2 年のままです。付与された年に使わず翌年も使わなければ、そこで消えます。「いつか使う」で持ち越せる期間は 1 年しかありません。

古いぶんから消化されるとは限らない。

繰越分と当年分のどちらから消化するかは、法律で決まっていません。就業規則の定めによります。当年分から消化する規定になっていると、繰越分が先に時効で消えます。自分の会社がどちらかは、就業規則で 1 度だけ確認しておく価値があります。

時間単位年休が使えるなら、平日枠が増える。

労使協定があれば、年 5 日を上限に時間単位で取得できます(労働基準法 39 条 4 項)。1 日では大きすぎる用事——平日の午前中だけ必要な手続きなど——はここに寄せると、1 日枠を丸ごと使わずに済みます。半日単位の運用は法律上の定めではありませんが、多くの会社が就業規則で認めています。

買取はあてにしない。

有給の買取は原則として認められていません。休ませるための制度だからです。時効消滅分・退職時の未消化分・法定を上回る上乗せ分については会社が任意で買い取ることがありますが、どれも裁量なので、制度としては計算に入れないでください。

効く順序と、効かない順序

ここまでの手順が効くのは、有給が消える原因が意欲でも制度でもなく順序にあるからです。同じことを別の角度から 2 つ書いておきます。

1. 日数の目標は、取得日数を動かさない。

「今年は 15 日取る」という目標は、達成の可否を年末にしか判定できません。判定が年 1 回しかない目標は、途中のどの週にも行動を要求しないので、行動が変わりません。一方、項目に日付が入っていれば、判定はその日に来ます。動かすのは目標日数ではなく、その日にやることの具体性です。

2. 平日枠を「休む日」と呼んでいる限り、取る理由は作れない。

休むための日だと定義すると、取得の条件が「疲れていること」になります。疲れていない週には条件が満たされず、申請は翌月に送られます。これが毎月起きるのが、年末に日数が残る仕組みです。

「平日でないとできない用事の日」と定義し直すと、条件は「その用事があること」に変わります。 用事は疲労と違って自分で作れるので、毎月ひとつずつ見つかります。呼び名の変更だけですが、条件式そのものが入れ替わります。

なお、金額の話とは分けて考えてください。有給の枠は時間の話で、そこに何円使うかは別の判断です。金額の決め方は 体験にいくらまで使っていいか に分けて書きました。

今日決める、1 つの日付

残日数を数えるところから始めないでください。数えると、たいてい「そのうち考える」で終わります。

平日でないとできない用事を 1 つ書き出して、そこに実際の日付を入れる。

窓口でも、通院の付き添いでも、混む前の展示でもいい。曜日まで書いて、カレンダーに置く。申請はその後で構いません。

6 日を使い切る計画は要りません。1 日ぶんの使い道が決まれば、残りの 5 日は同じやり方で埋まります。順序はこれだけです。残日数から始めると、この日付は永遠に出てきません。


FAQ

よくある質問

忙しくて本当に休めません。使い道の話は的外れではないですか?
年 5 日については、2019 年 4 月から会社側に取らせる義務があります (労働基準法 39 条 7 項、年 10 日以上付与される人が対象)。この記事が扱うのは、その 5 日を超えて残っている平均 6 日のほうです。義務のぶんは会社が日付を決めますが、残りは自分で理由を作らないと動きません。本当に 5 日すら取れていない場合は、使い道より先に労務側の問題なので、この記事の範囲外です。
使い切れなかった有給は繰り越せますよね?
繰り越せるのは1 年ぶんだけです。年次有給休暇の請求権の時効は 2 年 (労働基準法 115 条) なので、付与された年に使わず、翌年も使わなければ消えます。2020 年の改正で賃金の請求権は当分の間 3 年になりましたが、年休は 2 年のままです。「いつか使う」で持ち越せる期間は、思っているより短いです。
会社に買い取ってもらえませんか?
有給の買取は原則として認められていません。休ませるための制度なので、お金に換えられると趣旨が壊れるためです。例外として、時効で消滅したぶん、退職時の未消化ぶん、法定日数を上回る上乗せぶんについては、会社が任意で買い取ることがあります。ただしどれも会社の裁量なので、制度としてあてにはできません。
休む理由を聞かれたら、何と答えればいいですか?
法律上、取得の理由を告げる義務はありません。「私用のため」で足ります。ただしこの記事が問題にしているのは会社に言う理由ではなく、自分の中の理由のほうです。自分の中が空欄だと、繁忙期でなくても申請そのものが後回しになります。
1 日だけ休んでも中途半端で、結局家にいるだけになります。
1 日で完了する体験を、事前にリストに書いていないからです。1 日枠は「小さくやる日」ではなく、平日でないとできないことを当てる枠として設計してください。本文の表に、1 日枠に向く体験の条件を書きました。
家族の予定と合わず、自分だけ休んでも仕方がない気がします。
全部を合わせようとすると、合う日がゼロになります。合わせる必要がある項目と、一人で完了する項目を先に分けてください。親と過ごす時間のように相手の年齢が締切を握っている項目は優先して合わせ、それ以外は一人で消化するほうが総量は増えます。相手の締切の数え方は あと何年、親と一緒にいられるか にまとめています。

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