60 代から始めるバケットリスト 20 選 — 健康寿命を意識した残り時間の使い方
60 代は、 人生の後半を本格的に始める 10 年 です。
日本の健康寿命は男性 72.57 歳 / 女性 75.45 歳(厚生労働省、令和 4 年値)。60 歳から数えると、残りは 10 年強から 15 年 です。これを「短い」と感じるか「十分」と感じるかは、 今 何を計画しているか で決まります。
ただしこの健康寿命は 0 歳時点の平均値なので、すでに 60 歳まで健康に過ごしてきた人の実際の残り年数は、単純な引き算より長くなる傾向があります。あくまで計画の目安として使ってください。
Bill Perkins は『DIE WITH ZERO』で、資産のピーク(ネットワース・ピーク)を過ぎたら取り崩しに転じるべきで、その時期は多くの人にとって 45 〜 60 歳だと述べています。60 代は、その考えに沿えば、お金を経験に変えていく段階にあたります。
「60 代の夢リスト」「100 の夢リスト」といった形で 100 個を書き出すやり方もありますが、60 代では数を揃えることより 残り時間の制約が強い順に並べること が効きます。本記事では、60 代から始めて十分楽しめる、しかし時間制約が見え始める経験を 20 個に整理しました。100 個の書き出しから入りたい場合は やりたいことリスト 100 の作り方 を先にどうぞ。
女性と男性で、60 代の設計はどう変わるか
「60 代 女性」で調べると、健康法か趣味の紹介ばかりが出てきます。ですが、性別で本当に変わるのは精神論ではなく数字です。先にそこだけ確定させます。
| 健康寿命 | 平均寿命 | 動けなくなってからの期間 | 60 歳からの「動ける残り」 | |
|---|---|---|---|---|
| 女性 | 75.45 歳 | 87.09 歳 | 11.63 年 | 約 15.5 年 |
| 男性 | 72.57 歳 | 81.05 歳 | 8.49 年 | 約 12.6 年 |
読み取れることは 2 つあります。
1. 女性のほうが、60 代からの「動ける時間」が約 3 年長い。
15.5 年と 12.6 年の差は、体力を要する項目をどこまで後ろに置けるかを変えます。60 代前半に詰め込む必要は、女性のほうが少しだけ小さい。1 都市滞在型の海外旅行や、体を動かす趣味の習得は、60 代後半に置いても間に合う確率が高くなります。
2. 同時に、「動けなくなってからの期間」も約 3 年長い。
こちらのほうが設計への影響は大きいかもしれません。女性は平均で 11.63 年、男性は 8.49 年。自由に動けない状態で過ごす時間が、女性のほうが 3 年長いということです。
この期間に効くものは、その期間に入ってからでは用意できません。動けるうちに済ませておく必要があるのは、たとえばこうした項目です。
- 会いに行ける関係を、会いに来てもらえる関係にしておく — 自分から動けなくなったとき、残るのは相手が来てくれる関係だけです。60 代のうちに、こちらから足を運んで会っておく相手を決めておく
- 住む場所を、動けなくなった前提で一度見ておく — 階段、病院までの距離、買い物。引っ越すかどうかは別として、判断は元気なうちにしかできません
- お金の置き場と、その所在を誰が知っているかを整理する — 口座、保険、契約。終活は「手続き」より先に「やりたいこと」から に、手続きと体験のどちらを先にやるかの順序を書きました
さらに、平均寿命の差は 6.04 年あります。夫婦であれば、統計的には女性が後に残る側になる確率が高い。「二人でやること」と「一人になってからも続けられること」を、60 代のうちに分けて考えておく価値があります。ひとりの時間の設計そのものは おひとりさまの老後にやりたいこと が近いテーマを扱っています。
なお、これ以外の「女性はこうあるべき」という話は、データの裏づけがないのでこの記事では扱いません。以降の 20 選は男女で共通です。
カテゴリ 1: 残り体力でやる旅(5 項目)
1. 1 都市滞在型の海外旅行
複数都市を周遊するハードな旅でなく、 1 都市に 5 〜 7 日滞在 するペースに切り替える。70 代でも実現可能。
2. 国内の “行ったことない地域” を網羅する
47 都道府県、有名な神社・温泉・絶景。60 代は時間と経済の余裕でこれが実現可能。
3. クルーズ旅行
体力的負担が少なく、長期で世界を見られる。60 代の旅行スタイルとして最適。
4. 自分の “ルーツの場所” を訪ねる
両親・祖父母の出身地、自分が育った街、思い出の場所。思い出の配当の総決算。
5. 配偶者・パートナーと “30 年前の旅行” を再現する
若い頃に二人で行った場所を再訪する。比較する体験そのものが 思い出の配当になります。
カテゴリ 2: 趣味の深堀り(5 項目)
退職後の時間を、 趣味の “深さ” に投資する時期。
6. 楽器を 1 つ習得する
完璧でなくていい。“60 代から始めて 70 代で人前で 1 曲弾く” は実現可能。
7. 絵 / 書道 / 写真など創作活動
形に残るものを作る。退職後の “型” になります。
8. 体を動かす趣味を 1 つ持つ
ゴルフ、ヨガ、テニス、社交ダンス、卓球。健康寿命を伸ばす最大のレバレッジ。
9. 読書三昧の時期を設ける
20 年読みたかった本を一気に。60 代の集中力なら可能。
10. 料理を本気で学ぶ
家庭料理を超えて、本格的なジャンルを 1 つ。思い出の配当が日常で配当を払い続けます。
カテゴリ 3: 家族と過ごす時間(5 項目)
60 代の家族時間は、 孫と子供と自分の親(健在なら) の 3 世代が同居する稀な時期。
11. 孫と二人だけの旅行や時間
孫の小学生期は孫にとっても祖父母にとっても最高の 思い出の配当です。
12. 子供 / 孫の卒業 / 結婚 / 出産を心から祝う
家族の節目に意識的に参加する。
13. 自分の親と最後の時間を過ごす(健在の場合)
親が 80 〜 90 代の場合、 会えるだけで価値があります。
14. 配偶者・パートナーとの “二人だけの時間” を再設計
子供独立後の関係性の再構築。
15. 家族写真と家族史を整理する
家系のアーカイブを後世に残す作業。これ自体が 思い出の配当を生みます。
カテゴリ 4: 自分の “残し方” を設計する(5 項目)
60 代は、 自分が世界に残すもの を考える時期。
16. 自分の人生を 1 冊にまとめる
完全な自伝でなく、テーマを絞った文集でも。
17. お世話になった人にお礼を伝える
恩師、上司、友人の親。 70 代以降では相手の健康状態で叶わなくなる ことが増えます。
18. 自分の死後の “希望” を文章にする
葬儀、相続、医療判断。家族が困らない準備。
19. 後輩 / 若手に教える立場に回る
知識と経験を渡す経験。教えることで自分も学び直せます。
20. ボランティアや地域活動に貢献する
「他者のために何かをする」習慣は、 死亡リスクの低下と関連 することが報告されています(55 歳以上を対象としたメタ分析で、調整後 24% 低下 — Okun et al., 2013, Psychology and Aging)。
20 個から始める方法
全部やる必要はありません。
体力的にハードな項目から優先 することだけ意識してください。 70 代になってから始められる項目 は後回しでも構いません。
優先順位の例:
- 体力が必要なもの(海外旅行、運動系趣味)を 60 代前半に
- 創作・学習系を 60 代中盤に
- 家族と “残し方” は 60 代後半でも実行可能
リストの実装については バケットリストが続かない 5 つの理由 を参照してください。日々の管理ツールの選び方は バケットリストアプリ おすすめの選び方 にまとめています。
60 代を「老後」と呼ばない
「老後」という言葉は、60 代の活動可能性を矮小化します。
健康寿命まで 10 〜 15 年あり、その間に実行できる経験は驚くほど多い。 60 代を “後半人生のスタート” と捉え直す ——これが Bill Perkins の『DIE WITH ZERO』が提示する発想です(詳しくは 完全要約)。
時間が限られていることは事実ですが、限られているからこそ意識的に使い切る価値があります。まず 1 つ選んで、次に動く日付を決めてください。定年というイベントを軸に考えたい方は 定年後・老後にやりたいこと 25 選 を、相続や生前整理と並行して考えたい方は 終活は「手続き」より先に「やりたいこと」から を合わせてどうぞ。
FAQ
よくある質問
- 女性と男性で、60 代にやっておくべきことは変わりますか?
- 項目そのものはほとんど変わりません。変わるのは数字です。健康寿命は女性 75.45 歳・男性 72.57 歳、平均寿命は女性 87.09 歳・男性 81.05 歳(2022 年・厚生労働省)。60 歳から数えると自由に動ける期間は女性のほうが約 3 年長く、同時に動けなくなってからの期間も約 3 年長い(女性 11.63 年 / 男性 8.49 年)。本文の「女性と男性で、60 代の設計はどう変わるか」で、この差が優先順位をどう変えるかを整理しました。
- 「100 の夢リスト」を 60 代で書く意味はありますか?
- あります。ただし書き方を変えてください。30 代の 100 個は選択肢を広げるためのものですが、60 代の 100 個は締切の近い順に並べ替えるためのものです。100 個出したあとに「体力が要るか」「相手の年齢に締切があるか」の 2 つで仕分けると、上位 10 個が自動的に決まります。書き出しの手順は やりたいことリスト 100 の作り方(記入用 PDF つき)にまとめています。
- 60 代でやりたいことを今から始めても遅くないですか?
- 多くの項目は遅くありません。ただし、 体力が必要な経験 と 長距離の海外旅行 は健康寿命の崖が近づくにつれて選択肢が狭まります。優先順位をつけて、 体力が落ちる前にやるもの を最初に着手するのが鉄則です。
- 退職後に時間を持て余します。
- これは多くの人が経験する問題で、解決策は「趣味を探す」より「時間の構造を作る」です。毎週決まった活動(運動、勉強会、ボランティア)を 2 〜 3 個入れるだけで、時間に枠ができます。バケットリストの項目もこの構造に組み込みやすくなります。
- 健康寿命が近いと言われると、焦って何もできなくなります。
- 焦る必要はありません。健康寿命は 平均値 で、個人差は大きい。自分の体の状態を客観視しつつ、 体力が必要な項目から優先的に消化 していけば十分です。本記事の 20 選も、無理ない範囲で 5 個から始めるのがおすすめ。
- お金が心配で経験への投資ができません。
- 多くの項目は 大きなお金が必要ない ものです。地元の歴史散策、近所の習い事、旧友との集まり、孫との時間——これらの中核は時間と意識が資源です。お金を理由にしない経験から始めるとよい。
- 体力的にもう海外旅行は難しい気がします。
- 60 代前半は多くの方が海外旅行可能です。 ペースを落とした旅(1 都市滞在型、ガイド付き、車椅子対応など)を選ぶことで、70 代でも実現可能です。「無理だから諦める」より「どうやれば可能か」を設計するのが DIE WITH ZERO 的発想。